魚介類と放射能について

東日本大震災による、東京電力福島原子力発電所の事故における水産物への放射能の影響については、事故発生当初より不安を感じ注視してまいりました。3ヶ月がすぎ、未だ水産物にどのような影響がでているか、国、民間団体等、どの情報が正確なのか、様々な情報に揺らぎをかんじています。
弊社としましても、どのような選好をすれば、安全で安心な魚介類を提供できるのか、悩んでまいりました。
震災以来、お客様から放射能を心配して「お魚は食べても大丈夫ですか。」「どこで捕れた魚ですか。」という質問を多くいただくようになりました。環境団体などからも「 放射能と魚に関する、消費者の意見を聞かせてください。」等とお電話いただき、関心の高さを痛感いたしました。
 
情報が錯綜する中、弊社としては、食品を担当する厚生労働省や漁業を担当する水産庁、各環境団体等のデータや分析を考慮し、安心で安全な魚介類を販売できるように努めたいと思っております。
 
また、放射能と魚介類の注目すべき、データや分析をまとめ、皆様に御報告できるよう勉強してまいります。
1、魚体における放射能の暫定規制値
食品衛生を担当する、厚生労働省の所見です。
 
食品中の放射性物質に関する暫定規制値の基準は、食品衛生法の規定に基づくものです。
「原子力施設等の防災について」(昭和55年6月原子力安全委員会)中の「 飲食物摂取制限の防災策について」では、魚介類は対象となっていないため、暫定規制値が設定されていませんでした。原子力安全委員会によると、「 一般的には、海水中に放出された放射性物質は、潮流に流されて拡散していくことから、実際に魚、海藻等の海洋性物質に取りこまれるまでには、相当程度薄まると考えられる。また、放射性ヨウ素については、半減期が8日と比較的短いため、人がこれらの海産物を食するまでには、相当程度低減しているものと考えられる」旨の判断がされていました。しかしながら、茨城県沖のコウナゴから、相当程度の放射性ヨウ素を検出した事例から、厚生労働省では、原子力安全委員会の助言を受け、食品衛生法第6条第2号に該当するものとして、飲料水及び牛乳・乳製品以外の食品として暫定規制値が設定されている野菜類中の放射性ヨウ素と同一の暫定規制値である2,000Bq/Kgを基準とし、食用に供しない取り扱いとしました。
以上が、厚生労働省、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会、放射性物質対策部会の『魚介類中の放射性ヨウ素に関する当面の所見』の骨子です。
しかしながら、暫定規制値の2,000Bq/Kg基準の、妥当性については、新聞報道などで疑問視されています。
『食品衛生法』
第六条  次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
  1. 腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。ただし、一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない。
  2. 有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
  3. 病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの。
  4. 不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの。
2、なぜ、コウナゴだけなのでしょう?
はじめてコウナゴから放射能性物質が検出されたのは4月4日でした。茨城県北茨城市の平潟漁協が、同市沖で採取したコウナゴから、1キロあたり4080ベクレルの非常に高濃度といわれる放射性ヨウ素を検出しました。これを受け、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会より『魚介類中の放射性ヨウ素に関する当面の所見』が通知されました。
 
それでは、なぜ、コウナゴから高濃度の放射性物質が検出されたのでしょうか。報道によると、コウナゴは、海面下の浅いところを泳いでいる為、大気中の放射性物質が海に注ぐと、海水の放射性物質の濃度が一時的に高くなり、その影響を受けるとしています。海水より軽い汚染水が水面近くを漂い、浅い海にいるコウナゴに影響しているという解説もありました。また、検査方法が影響しているとの指摘もありました。小さなコウナゴは、大きな魚が頭を取り可食部のみを検査するのと異なり、一定量を全体まとめてすり身にして検査するので、体内の放射性物質を含む海水なども検体にふくまれてしまい、数値が上がってしまう傾向にあるという指摘もありました。
 
4月4日以降も、福島県、茨城県沖の各地点では、随時、調査がおこなわれています。コウナゴだけではなく、他の海産物についても多くの調査が行われています。確かに、他の魚種に比べ、やはりコウナゴからは、高い数値が検出されています。検査方法については、厚生労働省により、細かな基準が設けられています。
 
以下は、水産省のホームページの『各都道府県における水産物放射性物質調査結果』より、その後のコウナゴの数値を抜粋したものです。 また、天気により海水の放射性物質の濃度に変化がみられるということにより、小名浜の4、5月の降水量を調べてみました。確かに、雨の後には、数値が上がる傾向がみられるようです。
(各地域で採取されたコウナゴから検出された放射性物質の値)
(小名浜の降水量)
3、川魚から放射能
水産庁のホームページの『水産物についてのご質問と回答』には、「湖や河川等の淡水の水産物への影響はどうでしょうか?」という問いに対し、「湖や河川等の淡水についても、放射性物質が大気中から水面に降下することや周辺の山や土地等に降下した放射性物質が雨水や地下水から流れ込むことが考えられます。これまでの水産物の放射性物質調査において、アユ、ヤマメ、ウグイ、ワカサギ、イワナで暫定規制値を超える値が検出されており、引き続き、淡水域の水産物についても広く調査を行います。」と回答が掲載されています。これからは、鮎の美味しい時期ですが、大変悲しい現実です。
 
淡水魚は、海水魚に比べて放射性セシウムを体内に溜め込みやすい傾向にあるようです。水産庁の調べによると、魚体内のセシウムが半減するまでに、海水魚が19日から84日間であるのに対し、淡水魚は魚種によるが50日から340日間かかるそうです。これは、浸透圧の関係によるものです。海水魚は、塩分濃度が高い海水と魚体内との浸透圧の差で水分が体外に出てしまうため、それを補うために海水を飲み、エラや尿から塩分を排出し、その時一緒にセシウムも排出されてしまいます。淡水魚は、そのような代謝が低いため、セシウムが魚体に溜まりやすいようです。
 
6月16日の朝日新聞には、『アユ漁寂しい解禁日 養殖も敬遠 業者悲鳴 川魚から放射能』という記事がありました。
 
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『東京電力福島第一原発の事故のあと、福島県の川魚から放射性物質が検出されたことで、影響が広がっている。釣り人が激減して漁協は大打撃を受け、出荷停止の対象でない養殖魚まで敬遠され、業者からは悲鳴があがる。シーズンを迎えたアユ漁にも影を落とす。
「このまま魚を出荷できなければ廃業するしかないでしょ」福島県二本松市で、阿武隈川に放流するヤマメとイワナの養殖業を営む紺野信也さん(51)は力なく話す。
阿武隈川の天然ヤマメから基準値を超える放射性セシウムが検出され、例年なら5月に行う稚魚の放流が漁協から止められたまま。2年かけて育てた11万匹は行き場を失い、その分だけでも損害は200万円になる。
旅館や料理屋に卸す成魚も売れなくなった。出荷量は1割に落ち込んだ。取引先には「放射性物質が出たのは天然で養殖魚は安全」と説明するが、「怖いから」と断られることが多い。エサ代がかさみ、来年の稚魚を育てるためにも今月中に魚の処分を決断しなければいけない。
「川魚の組合や業者は零細が多く、補償を求める力も弱い。自分たちだけ置いていかれている気持ち」漁協側も頭を抱える。
阿武隈川漁協では、ヤマメやイワナを対象とする渓流釣りを4月1日に解禁したが、その後にヤマメからセシウムが検出され、釣り人が激減した。7月1日にはアユの解禁も控える。堀江清志事務局長は「ヤマメを釣っても食べないから釣りをやらせてほしいと言う人もいる。判断は釣り人に任せるしかない」と話す。
阿武隈川の支流でウグイを取り、活魚や甘露煮を売る福島市の佐竹卓兵さん(72)は今月初め、いけすに入れていた280キロのウグイを処分した。ウグイから基準値を超えるセシウムが出て、県からの採取を止められた。頭から尾まで食べられる甘露煮は自慢の品だった。「生きているうちにもう漁は出られないかもしれない」
12日にアユ漁の解禁を迎えた、いわき市川部町の鮫川。例年なら、解禁日は数百人のファンでにぎわうが、今年は50人ほど。
釣りに訪れた同市の高橋博さん(65)は「こんな寂しい解禁日ははじて。地元の川が汚れているように思われているなら悔しい」。
売れた漁業券は例年の1割。関東1円から集まるはずの釣り客が離れ、漁協は収入の柱を失った。
鮫川漁協の緑川恵男さん(69)は「どこに怒りをぶつけたらいいのか」と憤る。』という内容でした。
 
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現在でも、福島県の阿武隈川、新田川、鮫川、真野川、等では、アユ、イワナ、ヤマメ、モクズ蟹から、高い値の放射性セシウムが検出されています。イワナやヤマメが獲れるということは、本来ならば自然豊かな清き流れの証しですが残念でなりません。